1990年代の末、

いまだ都会化の波が訪れていない、とある田舎町に住む主人公「三輪 正吾」。
彼には誰にも明かしてはいない、人とは違う能力が備わっていた。

人には見えないものを見てしまう【目】である。
この世ならざるもの(妖怪や幽霊など)が見えてしまう【目】
その力が備わったがゆえ、正吾は人と違った死生観を持つに至っていた。
とはいえ、日常生活になにか変化があるわけでもなかった……これまでは。

唯一の進学先である「常浪学園」で2回目の夏休みを終えようとしていたある日。
正吾は、漆黒の闇のような少女を見かける。

――それが、すべての始まり――

楽しかったはずの毎日が、次第に不穏な空気をまとい始める。
そんなものも、正吾は持ち前の明るさで吹き飛ばしてしまうつもりだった。

そして正吾を取り巻く3人の少女。
ソフトボール部のエースで、正吾のことを嫌っている同い年のイトコ。
家に匿うことになってしまう、記憶を失ったらしき正体不明の少女。
学校はおろか町の人間で知らない者はいない、呪い師の家柄の先輩。

正吾は自分でも気付かないうちに、1人の少女に深く心を惹かれていく。
それが、自分の「命」を脅かすものだとも知らずに――

気がつけば、そこにあったのは何ものにも代え難い『大切な時間』。
少女との恋が、愛が、そのささやかな時間が、深く心に染み渡る――

残暑にきらめく静かな町で、
ちょっと不思議で、とても愛おしい物語が幕を上げる。
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